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 介護保険制度の被保険者(保険料負担者)と受給者の範囲の拡大について、厚生労働省の有識者会議の意見が割れた。財源問題を正面から議論せずには前へ進まないことを厚労省は認識すべきだ。

 有識者会議の中間報告は、介護保険制度の被保険者と、介護サービスを受ける受給者の範囲について「将来の拡大を視野に入れ、その見直しを検討すべきだ」という点では一致した。だが、具体的な拡大範囲では二案に分かれた。

 二〇〇四年から始まった介護保険は、被保険者は四十歳以上、受給者は原則六十五歳以上となっている。

 一つの案は、高齢や老化に起因する疾病を対象とした現行制度の基本的な仕組みを維持したうえ、被保険者と受給者の年齢を「三十歳以上」に引き下げる。

 別の案は、年齢制限を撤廃するとともに受給者を高齢、障害など「要介護状態」になった理由を問わずに広げ、介護保険と障害者福祉政策を統合し「普遍化」を目指す。

 介護保険論議が始まった十年前と比べ高齢化は進行し、若い世代の高齢者への理解が以前よりも深まったことや、被保険者と受給者の範囲を一致させるべきとの保険原理に立てば年齢引き下げは理解を得やすい。

 意見が対立するのは「普遍化」だ。「社会連帯」の立場からの賛成に対し、反対意見は医療保険料に上乗せして保険料を徴収する現行方式では、負担増を嫌う若い世代の未納・滞納が増える恐れや、若年者は要介護状態になる確率が低いから障害者福祉を保険で賄うことへの抵抗感があることなどを挙げている。

 厚労省のいうように「普遍化」は、介護保険創設時から目指していた理念だが、今回「普遍化」が浮上した背景には、要介護高齢者の増加のほか、障害者福祉政策の財源の不足を捻出(ねんしゅつ)しようとの狙いがある。

 障害者福祉政策では財源確保の見通しの甘さが指摘されてきたが、財政の辻褄(つじつま)合わせを優先させ「はじめに普遍化ありき」で進めようとするから障害者団体も「個々人によって異なる障害者福祉の多様性が損なわれかねない」と懸念するのだ。

 厚労省がまずすべきことは、高齢者介護、障害者福祉のそれぞれの過去の財政検証、将来見通しを正直に示すことである。

 そのうえで障害を特別視するのではなく「社会連帯」の立場から国民共通の課題ととらえ、できるところから介護保険との統合を目指すべきである。

 社会保障は、保険原理とともに所得の社会的再分配で成り立つ。この原則を忘れないようにしたい。
東京新聞

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